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現状を打破する変革人材の採用・育成のすすめ(中編)~変革人材の具体例・特徴


2009年7月14日
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●変革人材の具体例・特徴

 前回のコラムでは、「経営環境にかかわらず、利益を生み出す仕組みを創り上げることができる人材」を『変革人材』と定義し、彼らを採用していくことの必要性を述べた。
 読者の中には、変革人材の人材像に関して、まだ具体的にイメージできない方もいるだろう。この場を借りて、私が出会ってきた変革人材の具体例を紹介したい。


【社会人8年目Aさんの事例】

 Aさんは8年目の社会人。積み重ねてきた努力と能力、そして理解ある上司に恵まれたこともあり、30代前半にして、売上高10億円規模の会社の取締役となっている。少し前まではある上場企業の社外取締役としても、その能力を余すところなく発揮していた。経営者である父の影響もあってか、学生時代からビジネスに興味・関心が高く、学生時代にはアルバイト先のNo.1営業として活躍した。
 そんなAさんは、ビジネスに関してのスキルを高めるべく、就職活動を通じ縁のあった、とあるコンサルティング会社に入社を決意した。

 通常、コンサルティング会社に入ると、上司・先輩のアシスタントとして調査・分析業務に従事し、知識・見識を高めていくものだが、Aさんはなんと先輩のサポート業務を拒否。持ち前の営業力を活かして、自らアポを取り、顧客のもとを訪れるという破天荒な行動に出る。
 新人コンサルタントが顧客のもとを訪問しても、経営の相談などしてくれるわけがない。その点を十分理解していたAさんは、ある部署で開発された、小売店向けのパッケージシステムの販売を開始した。

 パッケージシステムゆえに単価が低く、経験不足もあり、社内での初年度の成績は中の下程度。決して高いものではなかった。しかし、学生時代の営業経験から、「自分の顧客を持たなければダメだ」と感じていたAさんの戦略・行動は2年目以降、徐々に花が開き、リピートのオーダーにより、3年目には事業部のエースとなるまでに至った。

 しかし、Aさんの成長は止まらない。パッケージシステムを1人で(あるいは社内の人間だけで)売ることに限界を感じていた彼は、5年目に大手ビールメーカー複数社と提携を結ぶことに成功する。ビールメーカーの営業先とパッケージシステムの販売先はともに飲食店だ。パッケージシステムの導入により店の売上が上がるということは、ビールの消費量も増えるということなので、システムはビールメーカーの営業がみずからのメリットとして販売してくれる。
 結果として、Aさん自身が営業活動をしなくても、システムを販売する構造を創り上げることに成功し、その功績により今は取締役へと昇進した。


 Aさんはひとつの事例に過ぎない。しかし、Aさんは変革人材が保有する多くの特徴を備えている。
その特徴とは何か。洗い出してみよう。

■行動・選択に常に明確な意図がある(目的意識)
→ビジネスに関する知識・見識を高めるためにコンサルティング会社に入社

■所属する組織での突出した成果(行動力)
→学生時代のアルバイト先でのNo.1営業としての実績

■既存のやり方にとらわれず、自分の能力が最大限発揮される方法・環境を選ぶ(自己理解、環境選択)
→先輩のサポートを拒否。自ら販売に動く

■短期的な成果ではなく、中長期的に成果を最大化することを意識している(長期的視点)
→初年度の成績を上げることではなく、自分の顧客を得ることにフォーカス

■個人の成果ではなく、「仕組み」による成果を実現することを志向している(戦略思考)
→ビールメーカーとの提携


全員に共通するわけではないが、「変革人材」の多くはこのような特徴を備えている。


●変革人材はどれくらいいるのか

 「変革人材が素晴らしいのはわかる。しかし、変革人材と出会えることは極めて稀ではないか」

 そういう声を聞く。
 私の感覚では、上記のような人材は多く見積もって30人に1人、少なくても100人に1人程度はいるのではないかと考えている。

 中学でも、高校でも、大学でも、クラスに必ず1人は「目立つヤツ」「できるヤツ」がいたはずだ。彼らが変革の資質を持つ、「変革人材」の候補者だ。
 そんなにいるのであれば、我が社にも1人ぐらい入社してもいいのではないか。そう考える経営者・人事の方もいらっしゃることだろう。しかしそれは主に二つの理由から実現が難しくなっている。

■理由・その一)
 変革人材は、総合商社やグローバル・メーカー、コンサルティング会社、有名な金融機関など、一部の人気業種、職種に偏ってしまいがちである。
 変革の資質を持った人材は、力があるが故に、大手企業・人気企業に入社する可能性が高い。誰もが知っている有名企業に一度入っておくことは、転職の際に肩書きとして有利に働くし、力に見合った給与と、優れた先輩・同期に恵まれるケースも多い。

■理由・その二)
 「変革人材」のあり余るパワーを活かせるような組織制度を整えていない会社がいまだに多い。
 「新卒一括採用」や「年功序列」は、成長期の日本経済を牽引してきた制度だが、変革人材の採用と育成には極めて不向きだ。しかし、この制度化で成長を遂げた企業は、こういった組織の見直しは過去の成功体験を否定するかのようでどうしても慎重になってしまう。
 いまだに、10年経たなければ部下を持てず、20年経たなければ経営に携われないという企業は多い。コンサルティング会社や外資金融に勤めた20代の社員が、大企業の戦略立案のサポートや、大規模なM&A案件を手がけている今、「10年は泥のように働け」といった要求を若者に対して行っても、優秀な人材から見切りをつけて離れていく。限られた範囲と権限しか与えられていない状態で10年仕事をしている間に、彼ら自身の戦略能力、戦術能力を伸ばす芽を潰してしまっているかもしれない。
 組織が整っていない企業に入社した「変革人材」は、早々に退職して自分の力を存分に発揮できる環境に(起業や転職によって)身を置くか、あるいは、力を発揮できない環境で、いつの間にか凡庸な人材になってしまうか。どちらかの道を選ぶしかない。


 「大手・人気企業」でありながら「若いうちから、力を存分に発揮できる機会がある」という2つの要素を満たしている(ように見える)がゆえに、外資系企業への就職が人気となっている。日本企業への回帰が昨今進んでいるように見えるが、「9割の安定志向、企業頼み」の学生を対象にした人気ランキングは、「変革人材を採る」という視点からは役に立たない。

 必ず抑えておかなければいけないことは、先ほど挙げた、「目的意識」「行動力」「自己理解」「長期的視点」「戦略思考」といった変革の資質を持っているだけではダメで、それを積極的に活かす環境を整えるよう、会社を挙げて取り組む必要があるということだ。


●どうすれば変革人材を採用できるのか

 ここまで論じてきたことをベースに話すと、変革人材を採用するためにはいくつかの条件を満たす必要があることがわかる。


1.変革人材の力を120%引き出し、活かす環境を整えること
2.変革人材にターゲットを絞ったアプローチ(広報)を行うこと
3.変革人材かどうかを見極める選考プロセスを設計すること


 以上3点を満たすことで、企業の規模・知名度にかかわらず変革人材を採用することは可能だ。人材の力を120%引き出し、活かす環境とは、必ずしも、「評価制度や教育制度を整えなければ採用できない」と言っているわけではない。むしろ、それを整えるのは最後で良い。必要なのは、彼らが持っている資質(長所)を見極め、それが最大限発揮できる仕事を与えることなのだ。

 中国の史記に出てくる言葉の中に、「士は己を知るもののために死す」という言葉がある。人材一人ひとりの力を見極め、その力が発揮できる環境を用意し、適切に評価することが、今も昔も変わらない人材採用の極意であり、基本なのだ。

 次回以降のコラムでは変革人材の採用に成功している企業が、
どのように変革人材を採用し育成しているのか、実際に見ていくことにしたい。

 >> 現状を打破する変革人材の採用・育成のすすめ(後編)~変革人材の力を120%引き出し、活かす環境を整える   に続く


福井信英株式会社プロジェクトデザイン 代表取締役 福井信英氏

慶応義塾大学商学部卒。ビジネスに対する興味・関心から、大学3年次にベンチャー企業で働き始める。そこでの経験を通じ、小規模事業主にとっての営業とマーケティングの重要性を実感。大学卒業後は経営コンサルティング会社に就職。その後、学校法人のコンサルティングを手がけたことをきっかけに、採用・人材育成支援を行う(株)ジョブウェブに転職。以降、新卒事業部長、キャリア支援事業部長を歴任。中でも体感型の研修コンテンツの作成に力を入れ、東証一部上場企及び、急成長中のベンチャー企業を中心に、開発したコンテンツが続々と導入される。2010年、株式会社プロジェクトデザインを設立。

月間10万PVを超える個人Blog 人と組織とfukui’s blogを運営
http://fukui.livedoor.biz/

東洋経済オンラインにて、学生時代の学び方を連載中
https://www.toyokeizai.net/life/rec_online/success/list/SC/b7fa8c217dd5ab979df95a4df13337c2/




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