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採用戦略立案の基本を確認する


2009年8月26日
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ビジネス世界において戦略コンサルティングの実質的創始者であるブルース・ヘンダーソンは、「ビジネスにおける成功は、一に運。二に戦略だ」と言っていたそうだ。比較的有名な話なのでご存知の方も多々いらっしゃるだろう。

もちろん、「運に頼れ」「運気を上げろ」などとは言うつもりはない。戦略が大切だということを確認したいだけである。では、そもそも戦略とは何だろう。戦略とは、「目標達成のための資源配分と差別化」である。これも知らない人はあまりいない。この定義に当てはめて、自社の新卒採用戦略を立案すると、どのような解が導きだせるだろうか。自社ならではの個別解、最善解を導き出すことが、戦略立案と呼ばれる作業である。

もう少し戦略における当たり前すぎる基本要素を確認してみたい。
第一に知恵を絞るべきは、戦略目標の明確化である。自社の中長期戦略計画に基づいて、今季採用すべき人材の「あるべき新卒人材像とその要素」を洗い出し、選択し、知恵を絞り設定するのである。会社の中長期戦略計画についての正しい理解が前提になることは当然のことだろう。

間違っても、自社の現状分析からスタートしてはならない。現状の認識状態に足を引っ張られ、「あるべき姿」が導き出せなくなってしまうので、注意したい。現状維持でよいのならその限りではないが。現状維持で良いのなら、新たな取り組みは必要ない。企業の成長を考えるのならば、まず設定すべきは、目標となるゴールである。

目標設定が終わったのち、目標人材を獲得する上でクリアーすべき目標達成のための課題を明確にし、課題クリアーの為の具体策に落とし込んでいく。

この目標達成のための課題を抽出する上で役立つのが、資本主義下にある市場競争社会で必要となる発想、そう戦略発想である。

課題抽出をする上で、再び、当たり前の話を少し。戦略とは、市場における競争相手との戦いが前提にある。さらに、競争相手との間で獲得を競い合う「獲物」が存在する。そう、経営戦略フレームワークの代表でもある3Cの世界観だ。

・Customer(顧客・市場)
・Competitor(競合)
・Company(自社)

この顧客を頂点に置いた三角関係の中で、顧客という獲物を捕らえるために、競合と戦うことを前提に考えるのが戦略思考である。戦略とは「競争ゲーム」が存在する中で必要となる発想なのである。当たり前すぎてお怒りになっている読者もいるかもしれないが、まずは復習まで。

さて、この新卒獲得競争という領域で戦略を立案するということは、目標達成に対して3Cと「資源配分・差別化」という概念を使い、計画を練ることを意味していることは、ご理解いただけたであろうか。もちろん、学生から圧倒的に人気のある企業においては必要のない発想かもしれない。

が、そうは言っても、やはり「優秀」な学生は、いつの時代にもいるもので、人気企業とは言っても、学生は競合他社と比較した上で、「自分の働きたい企業」を選択している。その業界に一社しか存在しないという事実がない限り、「一社独占完全買手市場」というのは存在しない。やはりどの会社においても、一人でも多くの優秀な人材を獲得したいという思いはあるはずなので、採用戦略は必要なのだ。

では新卒採用戦略立案について、少し具体的に見てみよう。まず、「獲物」である顧客とは、就職活動中の学生を指す。「競争相手」である競合は、同じ業界の他社と他業界の他社。そして、自社とは、もちろんわが社、となる。ちなみに調査、分析の手順は、「学生(顧客)」→「競合他社」→「自社」となる。

この順番は大切。多くの企業が無意識に、「自社」→「学生(顧客)」→「競合」の順番で考えているふしがある。人間の思考の現実として、ついつい知識、情報が多く、なじみの深い自社から見てしまいがちだ。この点は十分に気をつける必要がある。

まず、分析すべきは獲物で「学生」である。獲物を認識できなければ、獲物獲得への作戦など浮かんでは来ない。学生の労働観に始まり、企業観、そして働く上での潜在的、顕在的ニーズとウォンツ、企業に求める本質は何かを一般論として企業という側面から分析を行い、続いて、業界企業に求めることの流れで調査、分析する。その上で、目標人材が存在する学生集団(ターゲット学生集団)を抽出する。ターゲットの明確化であり、いわゆる人材スペックの洗い出しや採用条件がこの部分にあたる。

ターゲット学生集団の認識状態や動向が掴めたら、同じ獲物を狙う「競合」の調査、分析に移り、最後に学生と競合に様子を捉えた上で「自社」の調査、分析に取りかかる。徹底に学生視点に立って、競合と自社が学生に提供できる価値を抽出するのである。そして、競合他社に対して、自社で取りうる有利な戦略オプションを立案していく。

課題や戦略オプションの抽出にあって、参考になる考え方も少し紹介しておきたい。

■差別化の3条件:学生にとっての魅力ある企業であることをPRするには?
・競合が絶対に真似のできない要素
・競合が真似するのに時間とお金がかかる要素
・競合が真似するには元気がなくなるほど難しい要素

学生は、あなたの会社と複数の競合他社を比較しながら、自分の志望する企業を選び優先順位をつけてくる。当然のことながら、競合他社に対して、ターゲット学生集団の視点で、自社がより魅力的である、働く価値があることを訴えていかなければ競争には勝てない。そう、ビジネスの基本である「顧客の心をつかむ」ための差別化を行うのである。

差別化の3条件をたたき台に実行プランを策定する上で参考になるのが、マーケティング戦略の立案で一般的に使われる4P分析だろう。こちらも合わせて使ってみるのも一考である。

■マーケティングの4P
・プロダクト:学生に対する自社の訴求、魅力ポイントは何か?
・プライス:採用予算、学生の活動資金はどれくらい使えるか?
・プレイス:採用活動空間、場所はどこにすべきか?
・プロモーション:PR+宣伝活動は何をどのようにすべきか?

最後に、限られた資源の有効活用の観点で、資源配分についても分析することにも触れておきたい。

■資源配分:選択と集中
 人材獲得戦略の実行において、手持ち資源をどのように配分すると課題をクリアーし、目標が達成できるのかを、人、物、金、情報などの観点から精査する。加えて、社内外から新たに獲得できる資源についても調査する必要がある。限られた資源で、あれもこれも、はできない。そんなことは当たり前だが、いざ自分、自社のこととなると希望的観測と絶望的観測が意識の中で動き出し、論理的、合理的に考える力を奪ってしまう場合がある。それ故、事実を元に、客観的に、自社の経営資源をベースに人材採用に活用可能な資源を洗い出す必要があるのだ。目標と課題を鑑み、論理的な判断として、捨てるべきところは捨て、集中すべきところに資源を集中してこそ、目標は達成される。

以上、採用戦略を立案する上での基本を確認してみた。御社のより良い人材採用にお役立て頂けると幸いである。


執筆者プロフィール

Image 古波倉 正嗣(こはくらまさつぐ) 
ヒューマンキャピタル・イニシアティヴ代表

ヒューマンキャピタル・イニシアティヴ代表、(株)マンゴーズ シニアアドバイザー、国際ディベート学会公認 ディベートトレーナー。現在、企業、官公庁研修所、自治体等 において、「思考力強化/コミュニケーション力強化」をテーマに、問題解決手法、論理的思考法、ディベート(日本語/英語)、プレゼンテーション(日本語/英語)、ビジネスラ イティング(日本語/英語)等、様々なプログラムの開発及び指導を行う。企業研修も多く人事との交流も深い。学生向けの就職活動支援セミナー講師歴は約15年になる。
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