• 天野敦之先生を招いて、学生の皆さん向けに会計について学ぶセミナーを実施した。
    参加頂いた皆さん、ありがとうございました。

    告知文、天野さんのプロフィールはこちら

    社会人になったら「会計は常識」と思っている人が多いと思うけど、
    実は経営コンサルティング会社に勤めている人であっても3年目ぐらいまでの人は、「マーケティング」など特定の専門分野や特定の業界に特化しがちだから、アカウンティングやファイナンスに関してはほとんど素人の人も多い。(恥ずかしいから皆知ってるふりするけど。)

    ベンチャー企業やメーカーの営業職で日々の業務に忙しい人は、意識して学ばないと学ぶ機会は少ないし、「日々の仕事にどのように活かすか」というブリッジの部分がイマイチ見えにくかったりするので、学ぶ必要性も感じなかったりする。

    証券アナリストとか投資信託に努める人、学生時代から株をやっている人は当然知っていると思うけど、そんなに多数派ではないと思う。

    会計は本当は面白くて、企業分析及び経営視点を養うのに非常に役立つスキルだけれど、普通に簿記3級の勉強からはじめると面白くなかったりする。管理会計からはじめると経営に興味のある人は面白く学べると思うけど、簿記の仕組みに関しては逆にしっかりわからないかもしれない。

    そんなわけで、今回の講座はそれぞれのチームを一つの会社に見立てて、企業の立ち上げから商品の販売、売上の回収までやってもらった。(ちなみに6チーム中、2チームが1年たつことなく破産した。まぁ、説明不足だった点もあるけれど、考えている以上に現金が早くなくなって、かつかつになるというのは、会社経営をしたことがある人であれば、誰でも感じたことだろう。テスト的に、キャリア支援部のメンバー3人が天野さんの講座に参加したときは、3人ともほぼ同じ投資内容で、保守的だったから、ここは学生と社会人の感覚の違いかもしれない。)

    会社を運営している気分で、財務諸表にいろいろ書き込むと、お金の流れを示す会計って本当に会社の血液の流れを示しているんだな。ってことがよく分かると思う。

    今回は、商品の「価格設定」と「競合の存在」もワークに盛り込んで頂いたから、マーケティングの巧拙が企業業績に密接に関わってくることも理解してもらえたんじゃないかな。と思う。

    講座を始める前に、天野さんに
    「会計が必要なことはわかりますが、何が一番役立つんですかね?」という質問をぶつけた。

    天野さんからかえってきた言葉は、
    「経営の大局観が掴めます。今、会社に必要なことは何か。広い視野で見ることが出来るようになるんですよ。」

    とのこと。まさにその通りだと思う。
    新入社員の間は、営業であったり、開発であったり、日々の仕事に追われ視野狭窄に陥り、会社がどの方向に向かっているのか。何をしようとしているのか分からなくなりがちだ。会社及び経営に関して、自分なりの意見を持ち、流されないようになる、「鳥の視点」と「錨」の役割を担っているのだろうと思う。

    セミナーに参加頂いた皆さんには、是非学んだことをご自分のブログやmixiにまとめるなどして、理解を定着させてもらいたいと思います。(基本的な指標さえ抑えておけば、簡単な経営分析は訓練でできると思います。大きな変化が起きている部分を見抜き、原因と結果の因果関係を考えること、他の指標への影響を考え、未来を予測するという基本的な思考法はマーケティング等のケーススタディーの考え方と一緒。)

    最後に、セミナーでも流されたクマ太郎ムービーを流す。
    コンサルティング会社→投資銀行業務と歩んでこられた天野さんが行き着いた境地を説明するムービーだ。
    社会人じゃないとわからないかな。と思っていたけど、参加者の心には思った以上に響いたようで、アンケートではいくつもコメントを頂いた。

    ・顧客のため。といいながら自分のことしか考えていない人
    ・猛烈に働いているけど、自分を見失って不幸せになっている人
    ・目標達成のために手段を選ばなくなってしまった会社(きまって数年で業績が急降下する)

    本当に多いんだよなぁ。

  • A.T カーニーの杉野氏、内藤氏をお招きしての「コンテキスト思考力トレーニング講座」行ってきました。
    良いのはわかっていたんだけれども、考えていた以上に良かった!!

    ちなみにセミナーの告知文はこんな感じ

    —-

    ■言葉は何故、力を持つのか。

    キング牧師、スティーブ・ジョブズ、イチロー、ムハマド・ユヌス。
    彼らの言葉に我々は心動かされます。彼らが放つ言葉には、その言葉が
    持つ意味以上の重みがあるように感じます。

    偉大な政治家や、経営者、スポーツ選手、教育者。彼らの言葉ひとつ
    ひとつに私たちは感動します。同じような言葉であっても、残してきた
    実績や体験により、言葉の重みは大きくかわってきます。

    ある人は、それを「言霊(ことだま)」といい、魂を込めた言葉言葉
    には意志が宿る。という表現をします。

    しかし、彼らの言葉が力を持つのは、言葉という「コンテンツ」では
    なく、行間である「コンテキスト」を知らず知らずのうちに、我々が
    読み取っているからなのです。

    この「コンテキスト」の力に着目し、ビジネスに応用するための
    フレームワークとしていち早くまとめられたのが、今回の提携講座の
    講師を務められるA.T.カーニーの杉野氏・内藤氏です。

    続きを読む

    —-

    杉野・内藤両氏の「コンテキスト思考」のフレームワークは3Sと名付けられている。

    Sun(太陽) …目標でなく、目的
    Surroundings(環境) …関係ではなく、関係性
    Soil(土壌) …価値ではなく、価値観

    の頭文字をとって3Sだ。このうち冒頭の「言葉の持つ力」を示したのが、Sun(太陽)とSoil(土壌)の部分で、社会人10年目で一つの部門を任されている身としてはここがビンビン響いた。基本的にリーダーシップのフレームワークだと思う。一方、Surroundingsの部分は、若手社員が現場で活用しやすいロジカルシンキングの延長線上にある「洞察力」を更に高めるためのフレームワークということができると思う。

    杉野氏、内藤氏の3S発想の原点は、いま、様々な分野のコンサルタント(しかも、力のある方々から特に)達が一斉に述べはじめている「脱MBA」的発想と共通のものがある。

    正確に言うと「脱MBA」とはMBAを否定する発想ではない。MBAはコモディティ化し共通言語化したツールとなっているので、MBA的な知識を一般常識として抑えた上で更にその上を目指すためのプラスアルファの発想や差別化要素をどうやったら得られるか。が議論になっている。(余談だが、極端に力のあるビジネスパースンと、MBAのなんたるかもわかっていない素人の両方が「脱MBA」を唱えているから、若手社会人の中にはとまどっている人も多いと思う。)

    杉野氏はINSEADでMBAも取られているので、MBAの重要性なんて僕らなんかよりよっぽど知っている。しかし、それはコモディティ化して、差別化を産み出す要素にはなりにくくなっているので、より数値にしにくく、説明しにくく、共有しにくい、「コンテキスト」に着目され活用される方法を考えられたわけですな。

    —-

    自分自身への知識の定着の意味も込めて、
    3Sのフレームワークで、印象に残った部分を1フレーズぐらいずつ、書き留めておくことにする。


    「目標は示され共有されるが、目的は示されない。」(Sunより)

    キャリア教育を生業とする私としては「まさに、コレが現代社会の病理だ!」と感じた。意味の喪失と言えばいいか。企業では売上目標や、営業目標が示される。企業を成長させるために社長は社員を叱咤激励する。思うように成績が伸びない社員は切り捨てる。

    成績を維持している社員も、目標達成自体が目的となってしまい、本来の目的を忘れ、倫理観にかけた行為に走る(結果として、企業に致命的なダメージを与える)

    なんのために働くのか、なんのためにこの目的を掲げているのか。この目的にはどんな社会的価値があり、働く人を幸せにするものであり、目の前に機会が転がっているのか。そういったことを伝わるように説明してあげないと「言葉に力はこもらないのだ」

    ということを改めて感じた。なんか本当に、売上・利益といった目標はどこでも掲げるけれど、「何故、それを達成するのか」といった部分に関しては詳しく説明してない企業が本当に多い。説明できないんだろうな。「社長のエゴを満たすため」だったり、「株主の要求に応えてクビにならないため」なんて本音でいったら社員が辛い思いまでして働く意味がまるでない。

    —-

    「データや数値、アンケートにも現れない、無意識の行動が”現場”には現れる。それを観察し、活かすことが重要」(Surroundings)

    まぁ、項羽と劉邦に出てくる張良のように「帷幄の千里外に勝負を決める。」現場をみずに、データと状況判断と洞察のみで勝敗を決することができる方も世の中にはいるけれど、まぁ、稀だと思う。普通は児玉源太郎とか、石原莞爾とか現場も見て決める人のほうが、優秀な将軍や参謀にはなるだろう。と思う。

    現場を見る。ってことは単純に判断の因子がいくつか追加され、差別化の要素を手に入れることに過ぎない。まぁ、それでデータ等による客観性が揺らぎ、主観で判断しちゃうようになると元も子もないけど、自己を客観視出来る人であれば、現場を見た方が情報が増えるので判断はしやすくなるだろう。と思う。

    現場・直感重視の経営から、データ重視の経営に代わり、データ重視は維持しつつも差別化の要素を手に入れるため、また現場や直感の重要性が叫ばれる時代になってきた。と思う。それは、進化だ。

    —-

    「自分自身の揺るぎない価値観が本当に面白いものを産み出す。しかし価値観モドキが世には溢れている」(Soil)

    まぁ、これもその通りだと思う。知らず知らずの間に、人の判断や意見といった価値観モドキに自身が影響されてしまい、自己の価値観を見失う。そういうことはよくあると思う。じゃあ、自己の価値観・信念の確立というのは、これからの社会人教育のテーマだ。

    個人のキャリア形成に関して、最後に2×2マトリクスに分けた考え方をいくつか見せてもらった。縦軸が物質的な利益、横軸が情緒的な利益。物質的な利益も情緒的な利益も満たす仕事が「天職」。物質的な利益を満たすが、情緒的な利益を満たさない仕事は「こしかけの仕事」、物質的な利益は満たさないが、情緒的な利益を満たす仕事は「あこがれの仕事」。「こしかけの仕事」は割り切って短期集中でやるのが良い。というアドバイスを頂いた。

    僕自身は天職を常に追い求めているが、時と場合によっては「こしかけの仕事」をやらざるを得ないときもあるだろう。そこで悩むことはどうしてもあるが、むしろ悩まず、短期集中で成果を出す。と割り切ってやれば、それはそれで気持ちがいいものかもしれない。と思った。

    —-

    興味のある人は、書籍でコンテキスト思考 論理を超える問題解決の技術
    も出版されたので読んでみるといいかもしれない。
    ただ、ロジカルシンキング等一般的なビジネススキルや思考スキルを身につけた後のほうが役立つことは多いと思うので、組織のリーダーやマネージャー層によりオススメする。

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    コンテキスト思考 論理を超える問題解決の技術

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    SFもののマンガってあまり読まないんだけど、こいつは凄かった。

    バイオメガ(全6巻/弐瓶勉)

    – あらすじ –

    西暦3005年。7世紀ぶりに火星への有人飛行を成し遂げた人類。すでに廃墟と化し、水も酸素もないかつての入植地で、探査船乗組員は1人の女と出会う。
    その後、帰還中に探査船は地球周回軌道上で大破。発見された乗組員の遺体は未知のウイルス【N5Sウイルス】に冒されたまま、軌道上を漂い、地上に胞子を撒き散らしていた…。

    半年後、地球。東亜重工のエージェント、合成人間 庚 造一は、DRFの管理下にある人工島【9JO】に潜入。そこは既にN5Sウイルス感染者で満たされていた…!! ウイルスの地表全域拡散まで残り役15時間。造一はN5Sウイルス適応者を探し出し、保護することはできるのか!?

    —-

    と、まぁこんな感じ。
    中身とか全然知らなかったのだが、表紙絵が綺麗だったので買った。

    世界の崩壊が、究極的に言うと一人の人間のエゴ…。というか愛から生まれているという展開はありふれているけれど、最後まで読まないとわからない。その部分だけとってみると、エヴァンゲリオンとか、キャシャーン(映画版)、古くは手天童子とかと通じるかな。(まぁ、エヴァはちょっと違うか。)
    世界の崩壊が生じたとしてもその原因となった人たちを憎めないのは、愛する人への想いだけは本物だからなんだろうね。

    SFものというと 星野之宣氏(宗像教授シリーズが有名だけど、宗像教授自体はあんま好きじゃない)と、藤子不二雄のSF(すこしふしぎ)シリーズが好きだったけど、こういうのもいいな。

    バイオメガはマンガというより映像作品だね。台詞は非常に少なく、絵から想像しなきゃいけないことが凄く多い。説明するほうが簡単なんだろうけど、あえて説明せず、読者に判断を任せている。これは結構難しいことなんじゃないかなぁ。

    6巻だけどすぐ読める。1回通して読んだだけじゃ多分わからないから、2回、3回と読むことで、「あぁ、そういうことね!」とわかる部分もある、奥深い作品です。

  • 約3ヶ月ぶりに東洋経済にコラム原稿を提出した。

     忙しかったのもあるが、

    「企業変革を起こせるようなパワーある人材を採用するためにはどうすればよいか。」

    という問いに対して、自分なりに納得のいく考察をしたかったから。という理由が大きい(担当のNさん、迷惑をかけてごめんなさい)。3ヶ月たって、自分の中でなにか吹っ切れたものがあったのか、すいすい書けた。企業変革を起こせるような優秀な人材を採用することって、きっと思ってるよりも簡単でシンプルだ。

     まだ、掲載は先になると思うが、是非多くの人に読んでもらいたいと思う。
     
     コラムに書かなかったことがひとつある。優れた人材を採用するのに「優れたミッション、ビジョンが必要である。」という提言だ。僕は心躍らせ、社会に価値を生み出す優れた理念のようなものが必ず必要だと思うのだが、そこに関してはまだ論理的に説明できないので、今回は記載しなかった。優れた理念があっても、つぶれてしまう会社もあれば、理念がなくともそこそこ儲ける会社もある。理念がしっかりしていることはいいことだが、さすがに世界に冠たる大企業になると、社員一人ひとりへの理念の浸透度って薄くなるんじゃないかな。と思ったり。

     ここはおいおい考えていくこととしよう。

    —-

    さて、本題。東洋経済のコラムの最後に次のような一文を載せた。

    —-

     優秀な人材を採用するのが本当に難しくなったと思う。
     小回りが利かず、意志決定に時間がかかる企業であればなおさらだ。

     3億年前~7000万年前に栄華を誇った「恐竜」が何故、絶滅したかご存じだろうか。隕石の衝突による寒冷化が主たる原因と捉えられているが、それは今回の経済危機のように「外部要因」であり表面的な問題に過ぎない。

     恐竜という繁栄を謳歌した種が一匹残らず絶滅した、真の問題は恐竜の内部構造にあったといわれる。変温動物である弱点を補うために2億年かけて進化させてきた「大型化」と大型化に伴う「長寿命」が隕石の衝突による環境変化の影響を何倍にも増幅させてしまった。長寿命であったが故に、進化のスピードが当時小動物であったほ乳類の何十倍も遅かった。結果、環境の激変に適応できず、絶滅してしまった。

     業績が悪化している企業もあるだろう。ただ、その悪化による原因を外部に求めているだけであれば、企業の存続はままならない。いつも、真に重要な問題は自らの内部にある。そして、内部をかえることが出来るのもまた、内部のものだけだ。

    —-

    戦略立案の基本は、外部環境分析と内部環境分析にあるが、この二つはそれぞれほんの少しずつ性格が違う。明確に書籍に書いてあるものは皆無といっていいが、優れた経営者は本能的に知っていることだろう。これから事業創造や事業変革に取り組む人はぜひとも覚えておいて欲しいと思う。

     事業の成否は8割が外部環境で決まる。
     書籍によっては、上がりのエレベーターに乗る。という表現を使っているところがある。
     フォローの風や、波に乗る。という表現を使う企業もある。
     この外部環境を読むことのパワーは、ある優れた経営コンサルタントの言葉に的確に表されている。

     「様々な経営者を見てきた。そして一様に優秀だった。しかし、優秀であっても事業が失敗することもあれば、馬鹿でも成功することもある。どこに違いがあるか調べた結果、成長市場でビジネスを展開していたかどうか。だけだった。」

     事業を拡大するとき、その成否は8割がた外部環境で決まる。
     それはそうだろう。自助努力で出来ることは限られている。むしろ、自助努力するのは当然だとも言える。
     自助努力した上で、その努力を後押しするような風や波に乗れているかどうか。これが企業の急成長・拡大を実現できるかどうかの差となる。

     さて、それに対して、「危機への対処」という観点ではどうか。
     事業の創造・成長段階での成否は8割が外部環境をどこまで読みきり、利用するかにかかっているが、
     実は危機が起きたときの対処は逆で8割が内部の自助努力にかかっている。
     経営環境が悪化したときにいち早く次のビジネスのネタを発掘できるか、どうか。
     徹底的なコスト削減によって、厳しい経営環境下でも利益を上げることのできる体質を築けるか、どうか。
     全て、基礎体力というか企業の内面をどこまで強化していたかにかかっている。
     (だから、ネットバブルとか不動産バブルとか、様々な業界が一気にふくらみ、そして淘汰されていくのだ)

     故に、だからこそ、

     外部環境を読むのに優れた人材は攻めに向き、
     内部環境を整えるのに優れた人材は守りに向く。

     これからの経営戦略家たちに、この言葉がいくばくかの参考になればと思う。

  • あるセミナーで講師を依頼された。引用したい文章・文献があったのだけれど、何という書籍にかかれていた文章だったか忘れてしまった。そんなとき、社内のブログに気になる書籍や文章を書きとめていたことを思い出し、検索。すぐに探していた本を見つけだした。

    本を読んで気付いたことや、記録しておきたいことをまとめる作業は大変だけれど、知識の定着という面では役にたつ。これから機会があれば、こちらのblogでも本を読んで覚えておきたいことをまとめていこうと思う。

    —-
    教育×破壊的イノベーション

    というわけで、今日、記録しておきたいと思ったのは、「教育×破壊的イノベーション」
    。現代のイノベーション理論の第一人者といえる、クリステンセン氏による「教育」のイノベーション理論だ。引用、記録しておきたい部分は数多くあるが、まずは下記の一文。

    日本企業が1970年代と80年代にアメリカの競合企業を追い抜いていた理由として決まって挙げられたのが、日本の人口はアメリカの四割でしかないのに、数学・科学・工学を学ぶ生徒がアメリカの四倍もいるという説だった。
    しかし日本が繁栄を遂げると興味深いことが起こった。理工系志望の学生や、理工系の学位を取得する学生の割合が、この20年にわたって低下しているのだ。何故、こんなことが起こっているのだろうか?

    ~中略~

    途上国が製造業を基盤とする経済を発展させるとき、生徒は科学・数学・工学を学ぶことで、貧困からの脱出を保障する大きな見返りを得ることができる。だが同じ国が安定と繁栄を実現すれば、生徒は自分が楽しいと感じ、自発的動機づけの持てる科目を、より自由に学べるようになる。

    そんなことから、奇妙な話だが、自発的動機づけをもてるような方法で教えられていない科目にとって、繁栄は敵になることがある。これが技術的優位がまず日本に移り、続いて中国とインドに移っている主な理由なのだ。

    —-

    以前、私自身も理系学生の理系就職離れに関してのエントリを書いたことがあるが、この本ではより汎用的に「技術優位」が大国から発展途上国に移る様が描かれている。

    現在の「ものづくり大国」としての日本は、軍事・宇宙開発等の一部技術を除き、多くの分野で日本は世界のトップの技術を保有している。しかし、一方では中国等への民間での技術移転も急速なスピードで進んでいる。日本の技術の粋を集めたエレクトロニクス分野の移転も進んでいるため、早晩中国と日本の技術レベルは並ぶだろう。(アメリカの軍事・宇宙開発技術のように、日本企業が手放したくないコアな部分に関してはいましばらくは大丈夫だろうが、国防技術に比べて外部に流出するのは早いだろう。)

    もし、日本が「ものづくり」の道を維持しようとしているのであれば、「ものづくり」に興味・関心のある学生が自然と増えるように教育・就職の面での改革を急がねばならないと感じる。
    科学・数学・工学等の分野に関して学ぶのが楽しくなるように教育のあり方を変えるという「自発的動機付け」に加え、職探し・給与面での優遇などの「外発的動機付け」も必要だろう。

    —-

    もうひとつ。
    教育×破壊的イノベーションで紹介されている、ハーバード大学の心理学者ハワード・ガードナーの多元的知能理論もメモしておく。ガードナーは「IQ」や「EQ」と呼ばれる狭い範囲の知能の定義を超え知能には8つのタイプがあるということを提唱した。かっこ内はその能力に優れた代表的人物だ。

    1)言語的知能(ウォルト・ホイットマン)
    2)論理・数学的知能(アルバート・アインシュタイン)
    3)空間的知能(フランク・ロイド・ライト)
    4)運動感覚的知能(マイケル・ジョーダン)
    5)音楽的知能(ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト)
    6)対人的知能(マザー・テレサ)
    7)内省的知能(ジークムント・フロイト)
    8)博物学的知能(レイチェル・カールソン)

    8パターンすべての知能を兼ね備えている人は少なく、多くの人は2~3の秀でた知能を持っている。ということが書籍内で述べられており、その例として、アルファベットの暗記が出来なかった少女が体を使ってアルファベットを表現することで、言語的知能の発達を促し、その分野に関しての知能を開放した様が描かれている。

    これは、私たちが外国語を学ぶ際にも使える方法で、1に優れている人であれば、「読み・書き」特に英語で日記やコラムをつづるというやり方が語学の発達を促すし、6に優れている人であれば、ガンガン話したほうがいいだろう。また、2に優れている人であれば文法から学んだほうが良いかもしれない。5であれば音楽や「聞く」という行為を通じて学ぶのが得策か。

    企業の採用活動に少し落とし込んでみると、言語・論理・数学といった1~2の知能に関しては筆記試験で見ているところが多い。それに加えて現在面接で特に見られているのは6の対人的能力と言えるだろう。

    残念ながら、それ以外の能力に関しては、それらの専門的な技能が必要とされている会社でしか見られていない。

    しかし、もし企業内で、採用・人材育成に関わる我々一人ひとりが、社員の優れている知能を発見し、その知能にあった指導方法・仕事の与え方が出来るとしたら、ひとりひとりの可能性を伸ばしてあげることが可能になるのではないか。(ひとつの能力を伸ばし、成功体験を積むと自己信頼感が高まり他の知能も伸びることが知られている。一流のスポーツ選手や芸術家に他の分野でも才能を発揮するのは、自己信頼感とそれに伴う他の分野の能力向上が関係しているのだろう。)

    もちろん、採用・人材育成に関わらないとしても、一人ひとりが個々に異なる知能を持ち、自らが得意とする「仕事」や「学び方」を知ることは、自己の可能性を伸ばし幸せを実現する近道だと思う。ジョブウェブを利用する学生にもこのようなメッセージを伝えていければと思う。