月に2回、東洋経済さまよりコラムの投稿を依頼されている。そう、実はfukuiは目立たないが、コラムニストでもある(そして、いうまでもないが詩人でもある)。ジョブウェブをクビになったら、コラムを書くかポエムを書いて糊口をしのごうと考えている。
実はここ2ヶ月は、経営者・人事責任者向けのセミナーを行うために、調査・研究に多くの時間を割いていたため、コラムを書くことが出来ずにいた。まぁ、全て言い訳ですが、久しぶりに原稿を送ったので、速報でアップ。
下記、コラムは12月に投稿した、現状を打破する変革人材の採用・育成のすすめ(前編)の続編になる。
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現状を打破する変革人材の採用・育成のすすめ(中編)
■変革人材の具体例・特徴
前回のコラムでは、「経営環境に関わらず、利益を生み出す仕組みを創り上げることが出来る人材」を『変革人材』と定義し、彼らを採用していくことの必要性を述べた。
読者の中には、変革人材の人材像に関して、まだ具体的にイメージできない方もいるだろう。この場を借りて、私が出会ってきた変革人材の具体例を一部紹介したい。
【社会人8年目Aさんの事例】
Aさんは8年目の社会人。積み重ねてきた努力と能力、そして理解ある上司に恵まれたこともあり、30代前半にして、10億規模の会社の取締役となっている。今は既に辞してしまったが、少し前まではある上場企業の社外取締役として、その能力を余すところなく発揮していた。
経営者である父の影響もあってか、学生時代からビジネスに興味・関心が高く、学生時代にはアルバイト先のNo.1営業として、店の発展におおいに貢献したという実績もあった。
そんなAさんは、ビジネスに関しての知識・見識を高めるべく、就職活動を通じ縁のあった、とあるコンサルティング会社に入社を決意する。
ここからの彼の行動が面白い。
通常、コンサルティング会社に入ると、上司・先輩のアシスタントとして、調査・分析業務に従事し、知識・見識を高めていくものだが、彼はなんと先輩のサポート業務を拒否。持ち前の営業力を活かして、自らアポを取り、顧客のもとを訪れる。という破天荒な行動に出る。
新人コンサルタントが、顧客のもとを訪問しても、経営の相談などに乗れるわけがない。その点を十分理解していた彼は、ある部署で開発されていた、小売店向けのパッケージシステムの販売を開始した。
パッケージシステム故に単価も低く、若さもあって、社内での初年度の成績は中の下程度。決して高いものではなかった。しかし、学生時代の営業経験から、「自分の顧客を持たなければダメだ。」と感じていた彼の戦略、行動は2年目以降、徐々に花開く。顧客は増え続け、リピートのオーダーにより彼の成績は上がり続け、3年目には事業部のエースとなるまで成長する。
しかし、彼の成長は止まらない。パッケージシステムを1人(あるいは社内の人間だけで)売ることに限界を感じていた彼は、5年目に大手ビールメーカー複数社と提携を結ぶことに成功する。ビールメーカーの営業は、システムの納品先でもある飲食店に確実に出入りしており、店舗の売上が上がることにより、ビールの消費が増えればこれ以上に嬉しいことはない。
結果的に顧客と深い関係にあるビールメーカーの営業が、システムを販売する構造を創り上げることが出来、営業活動をしなくても、システムが自動的に売れるような仕組みを創り上げることに成功した。その成果によって今は取締役となり、更なる業績拡大に向けて今も様々な取り組みを行っている。
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彼はひとつの事例に過ぎない。しかし、変革人材が保有する多くの特徴を備えた1人である。その特徴とは何か。洗い出してみよう。
■行動・選択に常に明確な意図がある。(目的意識)
→ ビジネスに関する知識・見識を高めるためにコンサルティング会社に入社。
■所属する組織での突出した成果。(行動力)
→ 学生時代のアルバイト先でのNo.1営業としての実績
■既存のやり方に囚われず、自分の能力が発揮される方法・環境を選ぶ。(自己理解、環境選択)
→ 先輩のサポートを拒否。自ら販売に動く。
■短期的な成果ではなく、中長期的に成果を最大化することを意識している。(長期的視点)
→ 初年度の成績を上げることではなく、自分の顧客を得ることにフォーカス。
■個人の成果ではなく、「仕組み」による成果を実現することを志向している。(戦略思考)
→ ビールメーカーとの提携
全員に共通するわけではないが、「変革人材」の多くはこのような特徴を備えている。
■変革人材はどれぐらいいるのか。
「変革人材が素晴らしいのはわかる。しかし、そういった人材と出会えることは極めて稀ではないか。」
そういう声を聞く。私の感覚で申し訳ないが、上記のような人材は多く見積もって30人に1人。少なく見積もっても100人に1人程度はいるのではないかと考えている。
中学でも、高校でも、大学でもいい。クラスに必ず1人は「目立つヤツ」「出来るヤツ」がいたはずだ。(もちろんそれが読者であるあなたの可能性もおおいにある。)彼らが変革の資質を持つ、「変革人材」の候補者だ。
そんなにいるのであれば、我が社にも1人ぐらい入社してもいいのではないか。そう、考える経営者・人事の方もいらっしゃることだろう。しかしそれは主に二つの理由から実現が難しくなっている。
理由・その一)
変革の資質を持った人材は、力があるが故に、大手企業・人気企業に入社する可能性が高い。誰もが知っている有名企業に一度入っておくことは、肩書きとして転職の際に有利に働くし、力に見合った給与と、優れた先輩・同期に恵まれるケースも多い。変革人材と出会えない一つめの理由は、総合商社やグローバル・メーカー、コンサルティング会社、有名な金融機関など、一部の人気業種、職種に偏ってしまうという点である。
理由・その二)
「変革人材」の有り余るパワーを活かせるような組織制度を整えていない会社が未だ多い。「新卒一括採用」や「年功序列」は、成長期の日本経済を牽引してきた制度だが、変革人材の採用と育成には極めて不向きだ。しかし、こういった制度化で成長を遂げた企業は、過去の成功体験を否定するかのようなこういった組織の見直しにはどうしても慎重になってしまう。
未だに、10年たたなければ部下を持てず、20年立たなければ経営に携われない。という企業は多い。コンサルティング会社や外資金融に勤めた20代の社員が、大企業の戦略立案のサポートや、大規模なM&A案件を手がけている今、「10年は泥のように働け」といった要求を若者に対して行っても、優秀な人材から見切りをつけて離れていく。限られた範囲と権限しか与えられていない状態で10年仕事をしている間に、彼ら自身の戦略能力、戦術能力を伸ばす芽を潰してしまっているかもしれない。
組織が整っていない企業に入社した「変革人材」は早々に退職して、自分の力を存分に発揮できる環境に(起業や転職によって)身を置くか、あるいは、力を発揮できない環境で、いつの間にか凡庸な人材になってしまうか。どちらかの道を選ぶしかない。
「大手・人気企業」でありながら「若いうちから、力を存分に発揮できる機会がある」という2つの要素を満たしている(ように見える)が故に、昨今、(業界を問わず)外資系企業への就職が人気となっている。各媒体会社が就職人気ランキングを発表しているし、日本企業への回帰が昨今進んでいるように見えるが、「9割の安定志向、企業頼み」の学生を対象にした人気ランキングは、「変革人材を採る」という視点からは役に立たない。
必ず抑えておかなければいけないことは、先ほど挙げた、「目的意識」「行動力」「自己理解」「長期的視点」「戦略思考」といった変革の資質を持っているだけではダメで、それを積極的に活かす環境を整えるよう、会社を挙げて取り組む必要があるということだ。
■どうすれば変革人材を採用できるのか
ここまで論じてきたことをベースに話すと、変革人材を採用するためにはいくつかの条件を満たす必要があることがわかる。
1. 変革人材の力を120%引き出し、活かす環境を整えること
2. 変革人材にターゲットを絞ったアプローチ(広報)を行うこと
3. 変革人材かどうかを見極める選考プロセスを設計すること
以上3点を満たすことで、企業の規模・知名度にかかわらず変革人材を採用することは可能だ。人材の力を120%引き出し、活かす環境とは、必ずしも、「評価制度や教育制度を整えなければ採用できない。」と言っているわけではない。むしろ、それを整えるのは最後で良い。必要なのは、彼らが持っている資質(長所)を見極め、それが最大限発揮できる仕事を与えることなのだ。
中国の史記に出てくる言葉の中に、「士は己を知るもののために死す。」という言葉がある。人材1人1人の力を見極め、その力が発揮できる環境を用意し、適切に評価することが、今も昔も変わらない人材採用の極意であり、基本なのだ。
次回のコラムでは、あるベンチャー企業を題材に、どのように変革人材を採用し、育成しているのか、実際に見ていくことにしたい。
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好況だとか不況だとか関係ない。優れた人材にとっては「10年は泥のように働け」といってもむなしく聞こえるだけだろう。過去の自分の成功体験を環境が変わったにもかかわらず、後進の人間に要求するのはやめてもらいたい。今の時代、10年泥のように働き、10年勉強し、10年マネジメントに取り組むというやり方では、時代に取り残されるばかりか、人材の成長の可能性を潰してしまうことになる(一部の人間、仕事に対してはそれが有効な場合もあるが)。人の成長を阻害すること、後輩が自分を超えて先に進むのを阻害することは、先に生まれたものが行ってはならない大きな罪のひとつだ。
補足になるが、戦略と戦術と戦闘で、求められる資質はことなる。戦闘(現場のオペレーション)で成果を挙げたものしか戦術(マネジメント)に携われず、戦術で成果を挙げたものしか戦略立案に携われないという組織では、人が持つ資質を伸ばす芽を摘み、適材適所を阻害する要因になる。(多くの人が、長所を伸ばせ!と言っているにもかかわらず。)現在、多くの起業が陥っている組織の問題は、経営の機能と役職を同一視していることに端を欲する。スポーツに例えるとわかりやすいかもしれない。優秀なプレイヤーが優秀な監督になるとは限らず、優秀な監督が優秀なオーナー(GM)になるとは限らないだろう。しかし、多くの企業はプレイヤーとしても、監督としても、オーナーとしても優秀であることを求めていたりするのだ。(生涯一研究者であることを望んだ ノーベル賞サラリーマンの田中さんなどは、己の欲するところを知っている典型的な人材例だろう。)





