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BOPビジネス概論 : 市場の特徴

    その1:はじめに
      その2:市場の特徴
        その3:ターゲット市場の特定
          その4:マーケティング・ミックス 1  
            その5:日本企業への提言
              その6:市場を開拓する人材要件 1 


BOP市場とは何か


 BOP(Bottom of The Pyramid)とは、2002年に著名な経営コンサルタント、C.K.プラハラード氏によって産み出されたコンセプトだ。ネクスト・マーケットという書籍で日本にも紹介されたその論文の中で、プラハラード氏は40億人以上の以上の人々が1日2ドル以下(世帯年収1500ドル以下)で暮らしていると示し、彼らを救済すべき弱者ではなく、意欲的な起業家であり、顧客であると考えよ。と訴えた。

 これは革新的な提言だった。途上国の貧困層を食い物にするのでも、援助するのでもなく、手に手をとって互いに経済発展して行くことがもっとも持続可能な発展形態だと提示したのだ。

 論文発表後、氏の予言通りBOP市場は急速な勢いで発展を始めた。次の系統だった調査は、WRI( World Resources Institute )のTHE NEXT 4BILLON だった。この調査レポートの中で、BOP市場は、base of the economic pyramid と表現を変え。世帯年収3000ドル以下の層が、全世界で40億人いること、彼らを対象にした消費者市場の規模は5兆ドルに達することを明らかにした。(同時にその上の所得層にいる、世帯年収の所得が3000~20,000ドルの層の市場規模は12.5兆ドルに達することも示した)

 BOP市場は5年前に比べて確実に、そして急速に豊かになっていた。


BOP市場の特徴


まずはじめに、BOP市場の特徴に関して述べる。特徴を理解し、機会として利用することができれば、市場進出の手助けとなるだろうし、理解不足であれば、逆に大きな参入障壁となることだろう。

1)都市部への人口集中

BOP市場は全世界に広がっているが、国単位ではなく、都市単位で市場を捉えたほうがわかりやすい。

2015年までには、アフリカには225、アジアでは903、ラテンアメリカでは225以上の都市部が出来ると言われている。発展途上国の368以上の都市でそれぞれ100万人以上、少なくとも23の都市で1000万人以上の住民を擁することになるという。合計すると、これらの都市部の人口は約15~20億人になり、その35~40%以上が、BOPの消費者で構成されることになる。(ネクスト・マーケットより引用)


人口が都市に集中していることはビジネスを展開する上で大きな助けとなる。

  • 流通コストを低く抑えることが出来る
  • 情報が迅速に広まる
  • 人材雇用が容易

以上の3点が都市部に人口が集中していることのメリットだ。流通が容易で情報が広まりやすいということは、消費者一人当たりにリーチするコストが安くすむということだ。

また、現地人材の雇用を容易に行える点も大きな魅力だ。低コストでの財・サービス提供を実現しなければならないため、BOP市場のオフィス・工場は可能な限り現地のスタッフで回すのが望ましい。ビジネスが軌道に乗れば事業は急拡大するため、豊富な人的リソースが供給される点は大きな魅力の一つだ。


2)規制緩和・イノベーションの大きな余地

都市への人口集中が進み、加えて若年人口が多いことは何を意味するか。これは政府の規制緩和や企業努力によるイノベーション(低価格での生産体制の確立や流通網の整備)が一度行われると、先進国の水準では考えられないスピードで市場が広がることを意味する。

インドは、「民間企業への深い疑い」を抱いたまま始まっている。その背景には、この国が東インド会社や植民地主義と関わっていた影響があり、現地の民間企業との付き合いも、あまり前向きに捉えられていなかった。「民間企業は貧困層を搾取するもの」という疑念は、「正しく道徳的なこと」を行う政府機関に対する絶大な信頼と結びついた。


インドは、規制の撤廃と自由競争の促進を政策に掲げたナラシマ・ラオ政権に移ってから急速な成長を実現した。インドに限らず、BOP市場を保有する発展途上国の多くは、ブラック・マーケットに代表される民間企業への不信から伝統的に政府が大きな規制を実行してきた。

逆に言うと政権交代や規制緩和による成長余地が大きく、いざ国による規制緩和が実行に移されると爆発的な市場成長が見込めることを示している。また、先進国でビジネスを展開してきた多くの企業はBOP市場向けの財・サービスのイノベーションに取り組んだことが極めて少ない。BOP市場の購買力にあった生産体制や流通体制、プロモーションにはイノベーションの余地がおおいにあり、他社にさきがけてイノベーションを生み出し、市場を制することが出来れば、巨大な先行者利益を得ることができる。

国単位で見ると新興国は年率10%程度の経済成長を実現しているが、BOP市場に限って成長率を見ると、50~100%近い成長を実現している。リスクコントロールは必要だが、早期に参入するメリットは十分あるろう。


3)貧しいがゆえの不利益を被っている

BOP市場の消費者は、適切なコストで製品やサービスを手に入れることができてない。一番顕著な例は、金融だ。BOP市場の消費者は地元の貸金業者からお金を借りるときに、年率100%以上の利子を支払うこともある。(ネクスト・マーケットで紹介されているダラピの事例では年率600~1000%の利子を支払っているという。)

グラミン銀行はこういった層に対して年利20%程度で資金を貸し付けることを実現した。日本では年利20%というと高金利だが、高金利に苦しんでいた消費者たちにとっては、これ以上なくいい条件が提示されたと言える。また、貸し付けた資金の回収率も極めて高い


また、それ以外にも地方での独占事業主の存在や、不十分な販売網、情報不足、強力な中間搾取事業者の存在などが、貧困ゆえの不利益を生み出ししている。

貧困ゆえの不利益をイメージするときは、離島や山小屋の小売店をイメージすると良い。そういった地域の事業主は、販売網が未発達なため輸送に多大なコストがかかっている。また、多くの場合、独占的に事業を行っている。そのため120円のジュースが150円で売られたりするわけだが、こういった状況がBOP市場で更に顕著に顕れていると考えてもらいたい。BOP市場が離島や山小屋の小売店と異なるのは、十分な人口を抱え、流通や商品を地域にあった形に整えれば大きな需要が見込めることだ。


この貧しいが故の不利益を理解し、ビジネスを通じて是正する方法を考えることが、BOP市場に効果的にアプローチする際に助けとなる。


4)急速に進むIT化

2008年に行われた調査では、全世界で41億人に携帯電話が普及しているという。2002年に行われた調査と比較しても利用者は10億人増えており、 2010年にはさらに10億人が携帯電話を利用するようになるという。増加する10億台の携帯電話のうち、8割は発展途上国への普及と見積もられている。

BOP市場の人々は携帯電話で農作物の相場を知り、最も高く販売できるところに商品をおろす。先進国が長い年月をかけて発展させてきたテクノロジーの恩恵をBOP市場の住人たちは余すところなく受取ることが出来る。それは裏を返せば、財・サービスのサプライヤーにとってもプロモーションや流通といったマーケティング面でテクノロジーを活用出来ることを意味する。


BOP市場を理解することで得られるインサイト


以上述べてきたのは、BOP市場の基本的な特徴に過ぎない。しかし、基本的な特徴を抑えるだけでも、多くの気付きを得ることができる。

第一に、BOP市場は豊富な若年人口と労働力を抱える魅力的な市場であること。
第二に、それにも関わらず政府による規制、イノベーションの不足、貧困ゆえの不利益などにより、成長が阻害されていること。
第三に、成長を阻害している要因を取り除くことができれば、爆発的な市場成長が見込めること。
第四に、BOPビジネスに進出する企業に求められているのは、市場にあったマーケティングであり、イノベーションであること。
第五に、企業が直面する最初のハードルはコスト構造の見直しになること。
第六に、企業がBOP市場を開拓するにあたり、テクノロジーの普及はおおいに助けになること。

以上だ。
今回はBOP市場の基本を抑えるにとどまるが、次回のエントリでは具体的にどのようなことに注意しながらマーケティングを進めていけば良いのか、考察していきたい。


福井信英
福井信英(ふくい・のぶひで)
慶應義塾大学商学部卒。株式会社ジョブウェブの事業部長として、数十社の採用コンサルティング及び、各種リサーチ、教育研修コンテンツの作成に取り組んだ後、独立。
現在は著述業ほか、複数のソーシャル・プロジェクトの実行を手掛ける。

個人blog: 人と組織とfukui’s blog http://fukui.livedoor.biz/
東洋経済オンライン連載コラム: 学生時代の学び方 http://bit.ly/5j7iFV


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