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BOPビジネス概論:マーケティング・ミックス 1/3

    その1:はじめに
      その2:市場の特徴
        その3:ターゲット市場の特定
          その4:マーケティング・ミックス 1  
            その5:日本企業への提言
              その6:市場を開拓する人材要件 1 


BOP市場と先進国市場の違い


さて本日は、BOP市場におけるマーケティング・ミックスについて紹介したい。BOP市場でビジネスを成功させるための基本コンセプトを、C.K.プラハラードは次のように紹介している。

BOP市場の基本となるのは、パッケージ単位が小さく、一単位あたりの利潤も低い。市場規模は大きいが、少ない運転資本でも利益を出せるビジネスである。(ネクスト・マーケット)

これは、先進国で展開されているビジネスの常識とは大きく異なる。違いを下記の表にまとめた。



BOP市場の購買力は、先進国に比べて低い。多くの消費者は、その日に必要なものを必要なだけ購入する。故に、食料品も、医薬品も、家庭用品も小分けにされたパッケージが求められる。

購買力が低く、小分けにされたパッケージを好むということは、一単位あたりの売上・利潤がとても小さなものになることを意味する。市場規模は大きく、急成長するが、単位あたりの売上・利潤が少なくともビジネスを存続し、成長させることができるよう、徹底した低コスト構造を実現しなければならない。

さて、そのようなビジネスをどのように実現すればいいか。マーケティング・ミックスの視点から見ていくことにする。

Product


BOP向けのProductをつくる際に意識しなければならないのは次の点だ。

  1. 優れた品質
  2. 生活環境に合わせたカスタマイズ


以上を満たしつつ、低コストでの開発を実現しなければならない。大変難しい課題ではあるが、BOP市場故に実現できることでもある。まずはBOP市場の消費者が製品に求める二つの要件を詳しく見ていくことにしたい。

1)優れた品質

大方の予想では、「貧困層はブランド志向ではない」となっていたが、貧困層は非常にブランド志向である。また、貧しいがゆえに価値も非常に重視している。(ネクスト・マーケット)

BOP市場の消費者は、確かに小さな購買力しか持っていない。しかし、同時にブランド志向であり、費用対効果をしっかり計算する賢い消費者でもある。

アフリカ市場でのトヨタ自動車のシェアはアフリカ全土で18%。ヒュンダイ、GM、フォルクスワーゲンを退ける。躍進の原動力となったのは、南アフリカのダーバン工場で生産されるカローラだという。

東洋経済オンライン : アフリカのビッグビジネスで光る日本のブランド力

日本では大衆車として認知されるカローラだが、その品質は高く、アフリカでカローラは高級車だ。アフリカの国々の人々にとって、故障が少なく性能が高いトヨタ車はまさに手の届く憧れだったのだろう。
(参考: 世界一蹴の旅 交通事情の定点観測 南アフリカ / カメルーン / ガーナ / コートジボアール )

また、週刊東洋経済2010年1月9日号では、母国のナイジェリア含めた数カ国で自動車の修理部品の販売を手がけるユーゴさんの話が紹介されている。
中国製品はどれも低価格だが、品質は玉石混淆。低品質の品をつかまされて顧客の信頼を失わないように、優良な製造者を探すことが大事だ。日本製品なら品質の問題はないと思いつつも、価格が高く手が出ない。
こちらは品質を見極める目によって、現地の市場のニーズに答え、事業を成功させた好例といえるだろう。


2)生活環境に合わせたカスタマイズ

埃や騒音、衛生面での劣悪な環境、電力や水など利用できる資源の不足。BOP市場には現地特有の生活環境の問題がある。これらの特有の事情に考慮したProductを提供する必要がある。

家電.WATCH 大河原克行の「白物家電 業界展望」

から、パナソニックの大月専務の言葉を紹介したい。

各国ごとにライフスタイルを調査し、それに適した商品企画を行なう。中国やドイツには、生活研究所といった形で、専任の市場調査部隊を設置しているが、それ以外の国でも、現地の社員などが中心となって、市場調査を進め、商品企画に生かすことになる。

以上の方針はBOP市場攻略に向けた典型的なProduct方針と言える。

研究をもとに開発された製品の事例として、インドネシア市場向けの冷蔵庫が例示されている。インドネシアでは家族が飲む水を毎朝煮沸し、それを冷やすために冷蔵庫を利用する。大家族向けに大量の水を冷やせる冷蔵庫を市場に投入するということだ。



さて、以上のように、BOP市場に対しては品質の良いProductを、現地の生活環境にあわせて提供することが必要不可欠になるのだが、パナソニックの坂本俊弘副社長は次のような言葉で語っている。

悪かろう安かろうでは、すぐに限界が来る。安くて、品質がいい『やすいい商品』であることが重要

これはすなわち、BOP市場向けのProductはゼロから設計したほうがよいことを意味している。先進国向けの製品の機能を落としてBOP市場に提供するのは、本質を外している。消費者は優れた機能を持つ、自分たちの生活にあった製品を求めているのだ。確かにトヨタのカローラなど、既存の製品がそのまま通用しているケースもある。しかし、トヨタですらBOP市場を狙った中国やインドの自動車にシェアを奪われつつある。

これは大変難しいことではあるが、不可能なことではない。先進国向けの市場で培った技術はBOP市場に対してそのまま流用できるものがたくさんある。そういった技術を活かしつつ、BOP市場向けに、Productを再設計し、低コストで生産・流通・広報を行える体制を整えるのが肝心なのだ。難しくはあるが、個々のBOP市場をよく研究し、理解することで実現できるはずだ。


次回はマーケティング・ミックスを構成する残りの3要素、Price/Place/Promotion に関して紹介させて頂く。



福井信英
福井信英(ふくい・のぶひで)
慶應義塾大学商学部卒。株式会社ジョブウェブの事業部長として、数十社の採用コンサルティング及び、各種リサーチ、教育研修コンテンツの作成に取り組んだ後、独立。
現在は著述業ほか、複数のソーシャル・プロジェクトの実行を手掛ける。

個人blog: 人と組織とfukui’s blog http://fukui.livedoor.biz/
東洋経済オンライン連載コラム: 学生時代の学び方 http://bit.ly/5j7iFV


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