今回はBOP市場でマーケティングに取り組む際に抑えておかなければならない要素を、Price(価格)の視点から見ていくことにする。
南アフリカでのトヨタの現地生産開始は、米国や英仏よりもはるか前の62年。ダーバン工場の年間生産台数は18万台弱で、規模では中国・広州工場とほぼ等しい。ダーバン工場は欧州向けカローラの一大輸出基地でもあり、現地の雇用創出に貢献してきた。トヨタ車のシェアはアフリカ全土で18%、南アフリカでは24%に迫り、一位を堅持している。
・大量生産による経験効果を活かす
経験効果はボストン・コンサルティンググループによって発見され、提唱された効果であり、wikiにおいて次のように紹介されている。
経験曲線効果は、ある業務がより頻繁に実行されるようになると、そのコストが減少することを表す。これはどのような商品やサービスにも適用できる。累計での生産回数が倍になるごとに、生産回数あたりの総費用(生産、管理、マーケティング、販売を含む)は一定かつ予測可能な速度で減少する。こうした効果は1960年代の後半、Boston Consulting Group (BCG)社のB.Hendersonによって提唱された。1970年代にBCG社によって行われた調査により、この効果は様々な産業において確認された。
財やサービスを大量に生産すると、生産・販売プロセスの様々な分野でイノベーションが起きるために、生産コストは一定かつ予測可能な速度で減少する。故に当初は利益を極力抑えたとしても、初期段階で一定のシェアを勝ち取ることに成功さえすれば、その後は大きな利益を得られるようになる。経験効果を念頭において、価格設定及び、柔軟に拡張可能な初期投資を行うのが望ましい。
・サプライチェーンを再設計する
先進国と同様の方法で資材の調達や販売をしていたのでは、とてもコストに見合った開発ができない。先進国のサプライチェーンのあり方をそのまま導入するのではなく、現地にあった形でサプライチェーンを再構築すべきだ。
例えば、メキシコに本拠を置く大手セメントメーカーのセメックス社は、スラムにいる低所得者層にセメントを販売するために、ソシオとプロモーターという役割を設けた。ソシオはセメントの購入のために貯蓄と支払いをお互いに監視・協力しあう組織だ。一方、プロモーターとはソシオに入会を支援した人の、人数と在籍期間によって歩合制で報酬を得る起業家集団だ。(構成員の98%が女性である。)これは商品の販売を現地住人に委託した例と考えられる。BOP市場ではそれがもっとも効率的な広報手段であり、販売手段だったのだ。同様の手法は、インドのヒンドゥスタン・リーバ・リミテッドがシャクティという組織で実線している。
また、インドのITCという企業では、サンチャラクという役割を農村に設けた。サンチャラクはITCによる研修を受け。家にインターネットに繋がるコンピューターが設置される。農民はサンチャラクの家で農作物の売買価格を確認したり、農具を購入したりする。サンチャラクは自身も農業を実線しており、豊かすぎもせず、貧しくもなく、地域で尊敬を集めている人が選ばれている。コンピューターで農民とITCとの間で取引が成立する度に、サンチャラクの元にITCから手数料が支払われる。これは教育をアウトソーシングした例として考えられる。
2)財・サービスのパッケージングを工夫する
BOP市場の消費者達は購買力に余裕がない。その日に必要なものを必要な分だけ購入する。故に、商品のパッケージは先進国で提供されるものよりも小分けにしたもののほうが一般的には求められる。
消費や選択の幅を広げるため、BOP市場で急速に発達しているアプローチとは、一回分の「使いきりパック」であり、量を少なくした手頃な値段の製品である。(中略)インドのシャンプー市場は、トン単位で算定すると米国市場と同規模である。~貧困層は富裕層と同じくらいブランド志向であり、P&Gの高級シャンプーである「パンテーン」もインドでは使いきりパックとして購入できる。
3)購入方法を工夫する、支援する
先に例として挙げたセメックスのソシオは貯蓄と信用販売をグループ単位で行う組織だ。
これは女性三人を1グループとし、グループ全体で貯蓄させ、計画通りに進むように互いにルールを守るといったプレッシャーをかけさせている。自宅に浴室や台所を増築できるようになる貯蓄プログラムと信用販売をセットにすることで、消費を促進させた。
ブラジルのカサス・バイアでも同様の取り組みが行われている。これはグループ単位ではないものの、個人の貯蓄額に応じて信用販売の枠をカサス・バイアで提供するというものだ。独自の評価基準によって信用を与えることにより、顧客に誇りと満足、そして購買力を与えることに成功した。
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以上がBOP市場でのPrice戦略に関する考察だ。実際のところBOP市場の消費者が購入出来る財・サービスを作り出すことができるかどうかは、どれだけBOP市場の消費者を自社のサプライチェーンのプロセスに巻き込むことができるかにかかっている。
市場にあった財・サービスを市場にあった形で提供するためには現地の住人を巻き込むというプロセスが必要不可欠になる。これが、BOP市場の開拓を先進国内にある本部や、先進国政府が主導しても上手くいかない決定的な理由のひとつだ。(かつての商社マンのように、市場を開拓してこい、という指示だけ受けて優秀なビジネスパースンが単身渡米するぐらいのほうが、BOP市場の開拓は上手くいくのかもしれない。)BOP市場開拓を真剣に狙う企業であれば、現地の消費者やスタッフと円滑にコミュニケーション出来るリーダーを育成が出来るかどうかが鍵になる。
さて、次回以降はPlaceとPromotionの視点からBOP市場でのマーケティングに関して詳しく見ていくことにしたい。

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